新時代のソーサリアンを提案する

30周年を越えたソーサリアンの夢と妄想を語り続ける

はじまりのゼロ SS「五稜郭炎上 - 転:宮古朱く」(ゴルカス編)

[1]函館の診療所(スタート地点)

カディアン(絶望の女神)戦、勝利直後の場面より
ゴルカス&メテオロイド。倒れたカディアンに近づくと……

カディアン「私は、長い夢を見ていたような気がする……
      最初は、確かに人々の救済を願っていたのだ。
      しかし、神と対話できる喜びに溺れた私は、
      いつしか神の命じるがままに動く木偶と化した。
      <絶望の女神>は言った。
      <<巨神の復活にはまだ足りぬ。絶望、苦悶、そして、
       哀しみの波動が、巨神の深い眠りを揺り覚ますであろう>>」

メテオロイド「巨神……だぁ?」

カディアン「私には判らぬ。
      女神が何ものであったのか、なぜこの世に戦乱を望むのか。
      ただ、分かることがひとつだけある。
      巨神は既に復活しているのだ……
      ただ、まだ目覚めの微睡(まどろみ)の中にいるだけで」

解説「カディアンはガクリと頭を垂れた。気を失ったようだ」

メテオロイド「嬢ちゃんらの姿が見あたらねェな。
       ……急ごうぜ」

部屋を出る。

[2]以降、診療所内部の探索

診療所の庭
解説「新政府軍の兵士たちは、混乱しているようだ。
   正気に戻って、あたりの惨状に困惑している者。
   操る者がなくなって尚も、狂気の殺戮を続ける者。
   そして、事態の収拾に努める者」

敵兵I「これは……我われがしでかしたことなのか…」

敵兵II「わしらぁ天子さまの御名のもと、新時代を作るために、
    北の果てまでやってきたんじゃ……」

敵兵III「て、抵抗したが悪いんじゃ!賊徒どもめが…!」

敵兵IV「賊は皆殺しじゃあ!斬って、斬って斬りまくらんね!」
診療所の小部屋

部屋の外まで敵兵たちが溢れている場所がある。

解説「ひときわ血気逸った新政府軍の兵たちが集まっている。
   中にいる誰かと、押し問答しているようだ」

場面は部屋の中に移動。
兵士たちと向き合ったノートン。その背後には少女エレイア。

ノートン「ここは病院である。控えられたい!」

敵兵「なんだ、貴様は?」

ノートン「この診療所の医者だ。
     傷ついた兵士たちの治療に当たっている」

敵兵「賊軍だな?」

ノートン「そのとおり。
     しかし、医者だ。
     医者にとって、賊軍も官軍もないのだ。
     ただ、生きる可能性のある者たちに、
     わずかばかりの望みを与えるのが仕事だ」

敵兵「よし、賊軍の医者だ!
   構うな、斬り捨てて、その首晒してしまえ!」

ノートン「それも良い。
     しかし、治療を終えるまで、ほんの一刻、
     一刻だけでも待ってはいただけまいか。
     老人の細首など、いつでも斬れるではないか」

敵兵「治療など……!
   処刑されるだけの賊ならば、
   今ここでそっ首斬られても、違いはあるまい」

ノートン「ま、待て……!幼子もおるのだぞ!」

エレイア「お父さまは、五稜郭の偉い士官さまなのよ!
     私たちに指一本触れてごらんなさい?
     お父さまに……う〜んと、怖いお仕置きをしてもらうんだから!」

敵兵「五稜郭の士官、だと…!?
   おい、いい獲物が見つかったぞ…!
   この餓鬼、捕まえろ!!」

エレイア「え、え、え……お父さま〜〜!」

メテオロイド「いい加減にしねぇか、悪党ども!」

メテオロイド&ゴルカス、部屋に乱入。両者の間に割って入る。

メテオロイド「米仏英 共同警備隊である!
       人の命を弄んだ貴様らに、もはや見る夢は無いのだ。
       神妙に縛につけ!」

エレイア「あ、それこないだのお芝居で出てきた、お奉行様の台……」

メテオロイド「……うるせェよ。いいとこなんだから、邪魔するな」

敵兵「邪魔をしてるのは貴様らだ!えい、斬り捨てろ!」

大量の新政府軍との戦い。
ノートン、エレイアに一定の攻撃が加わると死亡&Game Over。
彼らを守りながら、一定時間を持ちこたえると……
ケイリス&クラウドの率いる警備兵が、室内に乱入してくる!

ケイリス「待て待てぃ、米仏英 共同警備隊・隊長ケイリスである。
     お主らの司令官・山下喜次郎殿との話はついている。
     本診療所の兵は、抵抗すること能わぬ傷病兵であり、
     抵抗の懸念はなし。
     本病院を荒らすこと、まかりならぬ。
     刀を収めよ!」

敵兵、ザワザワと引いていく。

ケイリス「医者、負傷兵の他に、不届き者がおらぬか、改めさせてもらう。
     官軍も函館軍も、ここでは一切の戦闘を許さぬぞ!」

ノートン「私がご案内しましょう」

ケイリスを連れて、ノートン退場。

クラウドメテオロイド、ご苦労だったな。間に合ってなによりだ」

メテオロイド「いい加減、超過勤務手当があってもいいんじゃねェか?
       ケイリスの旦那に掛け合ってくれよ」

クラウド「お前の命を救ってチャラとのことだ」

メテオロイド「……あまり期待はしてなかったがよ。
       で、そこのチビすけ!」

エレイア「な、なによ、私のこと!?私のことなの!?
     まぁ、れでぃに向かって、なんて口の利きようなのかしら!?
     ねぇ、そこの隊長さん、部下の教育がなってないんじゃない?」

クラウドマドモワゼル、申し訳ありません。
     無学者ゆえ、ご寛恕いただけるとありがたいのですが。
     そして、私は隊長ではなく、副長でございます」

エレイア「ご、ご、ごかんじょ…えぇ、してあげるわ!
     ありがたく思いなさいね!」

メテオロイド「へぇへぇ、有難き幸せにござんすってなもんだ。
       で、チビすけ、もひとりいたマメすけはどうした?」

エレイア「チビ…!?マメ…!?
     あぁあ、そういえば、レーシャ!レーシャ!
     あぁ、どこへ行ったのかしら!?」

メテオロイド「いねぇのか!」

エレイア「ここに来た時には、確かにいたのよ!
     レーシャ!レーシャ!レーシャ…!」

メテオロイド「待て待て待て、チビが勝手に動くな!
       俺らが一緒に探してやるから…!」

解説「エレイアが仲間に加わった。」

[3]診療所内の探索を開始

診療所の中の人々との会話を進めていく。

クラウド「………」

メテオロイド「……なに、ニヤニヤしてるんだよ。気持ちわりぃ」

クラウド「(優しいな、とは、黙っていた方が良さそうだ)」

ケイリス「警備兵としての役割をきちんと果たしているようだな。
     結構、結構。励めよ」

ノートン「残念ながら、まだまだこの戦は続くだろう。
     この診療所では、敵も味方もない。
     すべての負傷した人間を、今後も治療していくつもりだ」

傷病兵I(官軍)「痛い…痛いよ〜かぁちゃん…!」

傷病兵II(旧幕府軍)
    「ノートン先生は、命を賭けて我らを守って下さったのだ。
     翻っても見れば、命を奪い、地を荒らすだけの
     我ら戦人とは、いったいなんなのだ……」

傷病兵III(旧幕府軍)
    「戦とは、剣を持つだけではないのだな……」

傷病兵IV(官軍)
    「我ら土佐の兵は、生きて恥をさらすよりも死を選ぶ!
     えい、殺せ!」

メテオロイド「これが侍…ってやつかね。
       おいあんた、生きる勇気もねぇ奴が、
       軽々しく死を選ぶなんて、叫ぶなよ」

傷病兵IV(官軍)「………」

傷病兵V(旧幕府軍)
    「お嬢ちゃん、無事で良かった。
     そうだ、もう一人のちっちゃい女の子、れいしゃといったか。
     中庭の方へ歩いていったが、ひとりで大丈夫なのかい?」

敵兵I「京に上洛したまでは覚えておるのだ……
    しかし、それ以降は記憶が曖昧で何も思い出せぬ……」

敵兵II「わしらぁ天子さまの御名のもと、
    旧幕府軍の賊ばらを根絶やしにするのじゃ…!
    あと一歩、函館さ、火の海になれば、
    わしらぁ天子さまにお褒めのお言葉を賜れるだ」

敵兵III「わしらぁ、なんてことをしてしもうたか……」

敵将・山下喜次郎
    「我が軍はいったいどうしてしまったのか……
     血気逸った、ではないな。
     血に飢えた兵士たちは、もはや我ら将兵の命すらも行き届かぬ。
     それでも我らは尖兵。
     本隊は、薩摩長州の猛け狂った強兵が控えている。
     函館は、否、天子さまが統べるこの国はどうなってしまうのだ……」

[4]レーシャの絵本

(発生条件)すべての人物と会話を終えていること

中庭の池のほとりで、一冊の絵本が落ちているのを見つける。

解説「池のほとりに、一冊の絵本が落ちている。
   読んでいた誰かがそのまま放り出してしまったかのように、
   途中のページが開いたままだ」

メテオロイド「なになに、<五稜郭の勇者たち>だって?
       子供の絵本みてぇだな……
       なになにフランスの士官が官軍をバッサバッサって、
       下っ手くそな絵だなぁ……て、なんだよ、引っ張るな!」

エレイア「ちょっと、ちょっと、貸してよ、馬鹿……!
     やっぱり!
     これ、レーシャの本よ……!?
     あの娘、パパから貰ったこの本が大好きで、
     いつも持ち歩いては、夢中で読んでたのよ。
     この本の勇者さまが、パパにそっくりだって!

     え、こんなヘンテコな顔のパパなのかって?
     馬鹿、そんなわけないでしょ!
     でも、レーシャにとっては、大事な大事な絵本だったのよ。
     この本を置いて、何処かに行ってしまうなんて……
     ありえないわ!」

メテオロイド「おいおい、餓鬼なんざ、他に気が向けば、
       どんな宝もんでも忘れて放りだしちまうもんじゃねェか。
       どれ貸してみな、俺が…」

エレイア「なに、なによ!離してよ!デリカシーのない男ね!!
     レーシャは、そんなんじゃ…」

解説「エレイアとメテオロイドが互いに絵本を引っ張り合った、その時。
   悲鳴のようなものが聞こえたように思え」

突如、画面フラッシュ&暗転。
元の画面に戻った時、木古内(デュエル編[起]の舞台)にいる。
ただし、全体として背景は平面的で、一枚絵のように見える。

エレイア「え、え、えーーー!?」

メテオロイド「おいおいおいおい、
       こぎたねぇ土星神ダームのケツの穴に賭けて、
       ここは何処だったんだい!?」

官軍らしき兵士たちが大挙して襲ってくる&戦闘開始。
エレイアの体力は低いため、残りHPを意識しながら戦いを進めること。
官軍の兵士を一体でも斃すと……

メテオロイド「なんでぇなんでぇ、こいつらは!?
       火星神マルスの雄々しき右腕に賭けて!
       なんてぇ手ごたえのなさなんだよ。
       まるで紙でも斬っているようじゃねェか!」

斬り捨てられた官軍の兵士は、そのまま四散して何匹もの白い鳥(P-ピジョン)と化す。群れで大挙するため、厄介な相手。それでもある程度の数を斃すと……

メテオロイド「紙、紙、紙か、紙なのか!?
       なんてこたぁねぇ、なら俺の炎魔法で焼……」

その時、空にぽっかりと穴が開き、その中から見知らぬ少女が顔を出す。

少女「嗚呼、なんと野蛮な人たちなの。
   本の中で炎を使うなんて。
   でも、妖ではないみたい。
   あの娘のお友達なのかしら?
   でしたら、あまり本の中を荒らさないで欲しいのだけど。

   ……まあ、いいわ。
   このページはお話しするのに、適しているとは言い難い。
   まずはとにかく、こちらへ登っていらっしゃいな」

少女が顔を出している穴から長いペンのようなものが差し込まれ、空中に梯子の絵を描く。それはそのまま実体を持って、本物の梯子となる。ゴルカスたちは、梯子を上っていく。

[5]少女の部屋

画面はうって変わって、柔らかい春の日差しが差し込む部屋の中。

少女「この絵本の持ち主は、本をとても大事にしていたのね。
   そんな本に、私たち<綴り手の民>の魂は惹かれるの。
   そして、時折、読み手をこちら側に招いて、
   本の世界を楽しんでもらう――それが私たちの喜び」

メテオロイド「<綴り手の民>、だってェ?こちら側?」

少女「そう、こちら側。本の中。
   <綴り手の民>は、本の中で生きる民。
   私は、ポーラス。
   本を読む人たちの想像が私たちの世界を拡げ、
   そして、私たちを生き永らえさせてくれる。
   本から人が離れた時、忘れた時、
   また別の世界へ――本へと移り住んでいく流転の民」

メテオロイド「おい、そんな話を信じ……」

エレイア「信じるわ、私」

メテオロイド「おいおいおい。
       途方もないペテンにも、すぐ騙されやがる、
       だから、餓鬼は嫌ェなんだ」

エレイア「自分が知らないものは信じない、だから大人はダメなのよ。
     だって、ここは本の中。
     でなければ、レーシャがいなくなった理由がつかないし、
     そうであれば、納得もいくのに。
     ねぇ、ポーラス、レーシャはここに来ているのでしょう?」

ポーラス「レーシャ……
     そう、パパが大好きなあの子も、ここに。
     私がここへ招いて。
     パパが働いている五稜郭の中で遊ぶ、
     あの娘はそれは楽しそうでしたよ?」

エレイア「あの娘が時々姿を消していたのは、そういうことだったのね!?」

ポーラス「本人には絵本を読んでいて
     眠ってしまったとしか思っていないはずですよ?
     絵本の記憶を胸に、ほんのひと時の微睡(まどろみ)。
     夢の中のお散歩」

メテオロイド「だが、お散歩……なんて、平和なもんじゃないみてぇだぜ?」

ポーラス「それが……本の世界に、
     外の世界から<魔>が侵入しているようなのです。
     我ら<綴り手の民>でなくば入れない、
     この世界に、どのようにして分け入ってきたのか…
     そして、私の小さなお友達も、
     本の中で見失ってしまったのです……
     あるいは、<魔>に囚われてしまったのかも」

エレイア「なんですって!?
     おぉ、レーシャ、レーシャ……」

ポーラス「<魔>の瘴気で、本の世界の見通しが悪くなっています。
     私にも、いまやすべてのページを鳥瞰することはできないのです」

メテオロイド「それはまた面……」

その時、地鳴りが響き渡り、画面(ページ)の一部が破け落ちる!

エレイア「キャーーーー!」

メテオロイド「な、なんだ……!」

破け落ちたページの端から、中ボス・怒りの精霊(風)が顔を見せる!

メテオロイド「これが<魔>の正体ってェわけかい!?」

ポーラス「とうとう、こんなところまで……!」

その時、エレイアが前に進み出て…

エレイア「レーシャを返して!返さないなら…私が相手よ!」

以上、ゴルカス編(完)

SS「五稜郭炎上 - 転:函館燃ゆ」(デュエル編)へ