新時代のソーサリアンを提案する

30周年を越えたソーサリアンの夢と妄想を語り続ける

はじまりのゼロ SS「五稜郭炎上 - 起:旅人彷う」(ゴルカス編)

[作者からひとこと]
Second Stage「五稜郭炎上」では、四散した3人の主人公(ソーサリアン)たちがそれぞれ異なる場所で目覚めるところから冒険がはじまります。主人公たちの名前は、導入ストーリーに準じて、仮にデュエル、クリスティ、ゴルカスとしています。

舞台は幕末の時代、北の大地<函館>に旧幕府軍(榎本/土方らが率いる軍)が追いつめられたところからのスタートです。「幕末ソーサリアン」は、もともとiOSソーサリアンのシナリオコンテストで提案したアイデアでしたが、その時はアイデア以上のものにすることができず、2年近くを経て、ようやく形にすることができました。

幕末の有名人たちに、Nextシナリオのキャラクター、エピソード、アイテムなどを目いっぱい詰め込んだ闇鍋的?シナリオを楽しんでいただければ幸いです(お約束のお断りとして、シナリオの都合上、史実には沿っていない記述も沢山あります。歴史を真面目に学んでいる方は、決して参考にしないでください。って、そんな人いないか^^;)。

全13回(!)の連作シナリオとなりますが、宜しくお付き合いいただければ幸いです。

[1]スタート地点。瓦葺の家屋と洋館とが立ち並ぶ市街地

 路地奥にて、目覚めるゴルカス

解説「見知らぬ街の路地裏だ。
   煉瓦造りの家屋に混じって、見覚えのない様式の家屋が立ち並ぶ。
   イリアスン、ではないのだろうか。
   仲間たちを呼んでみたものの、近くにいる様子はない。
   このままじっとしていても仕方がないし、
   街の様子を窺いつつ、ふたりを探した方が良さそうだ」

[2]市街地の探索

 市街地に出て、街の人々から情報収集

路地裏の隅。みすぼらしい襤褸を纏った老人
老人「…異国の旦那さま、哀れな老人にお恵みを……」

老人「金でも、食べ物でも、おぉ、食いかけでもえぇ。
   哀れと思わば、爺になにか憐みを……」

解説「老人にお金をあげますか?」

▲「はい」を選択した場合

 老人「ありがたや、ありがたや、旦那は神さまじゃ…仏さまじゃ…」

▲「いいえ」を選択した場合

 老人「異人さんには流れる血の色も違うと見えるぞな…ゴニョゴニョ……」
茶屋の前。椅子にかけて茶を啜る老人たち
翁「ここはどこか、じゃと?
  異人さんや、お前さんらはここがどこかも知らずに
  はるばるやってきたのかの」

翁「いいか、ここは日本、蝦夷は函館の港じゃよ。
  は・こ・だ・て。
  ん、聞こえておるとな?
  ……なに、日本とはどこか、じゃと?
  お前さんは、老人を馬鹿にしておるのかの?」

媼「異人さんや、あんたさんも茶を一服どうですかねぇ。
  私は、どうにもこぉひぃや紅茶とかいうものが苦手でしてねぇ。
  やっぱり、お茶は緑茶が一番ですよ」
商家。番台の前に座る番頭と、その客たち
番頭「おや、いらっしゃい。
   この函館の街も、今ではすっかり異人さんが珍しくのぅなりましたな。
   まだまだ異人さんを厭う人もいますが、
   これからは、海を越えて商売ができねば生き残れません。
   なんでも欲しいものがあれば、ご用意いたしまっせ」

客I「天子さまと将軍さまの争いが、
   まさか、こんな北の大地にまで及んでくるとはねぇ…」

客II「幕府軍は、京で敗け、大阪で敗け、江戸で敗け、奥州で敗けて、
   とうとうこんなところまでやってきて。
   いったい、いつまで戦うつもりなのかねぇ」

客III「幕府軍を率いるのは、榎本武揚さまだ。
   開明的なお方だとは聞いているし、
   あの方が五稜郭に入ってからこっち、確かに街の景気は良くなった。
   だが、それがなんだってんだい。
   戦がおっぱじまれば、景気なんざ、なんの意味があるのかね。
   お偉い侍にとっちゃあ、そんなあたりめぇのことがわからんのさ」

客IV「私には、政治の詳しいことはわかりません。
   ただ、正直者が一生懸命働いていれば、幸せに暮らせる、
   そんな世の中であれば、それでいいと思うのですよ」
街を行き来する人々
荷物を抱えた男「え、異人さんがなんの用だい。
        この大荷物はどうしたかって?
        余計なお世話さぁね」

荷物を抱えた男「街のもんは、甘く見ているようだがね、
        函館は今に火の海になるぜ。
        旧幕府軍は、敗残兵の集まりさ。
        新政府軍は、天子さまの御旗を掲げて、
        この国を支配している。
        今更、こんな北の辺境の兵力で勝てるわけがねぇ。
        異人さんよ、悪いことはいわねぇ。
        あんたも早く、自分の国に帰るこったぜ」

若い女「あんた、新選組土方歳三ってお人を知っているかい?
    鬼の副長と言うから、どんなに恐ろしい面相をしているのかと
    思いきや、どうだい、細面のなかなかに好い男じゃないか。
    あぁ、一度でいいから、お傍に添うてみたいものだよ」

洋装の侍「朝廷軍、新政府軍などと名乗ってはいるが、
     所詮は、徳川の将軍家を裏切った薩長の賊ばら。
     幕府軍は、最後の一兵となるまで戦う所存である」

気弱そうな男「あんた、知ってるかい?
       一昨晩から、港に旧幕軍の船が見当たらねェ。
       いったい、どこへ行ってしまったんだろうなぁ」
洋館に住む女の子たち

▲1回目

レーシャ「あたちはレーシャ。
     パパはごりょうかくでたいいをされているの。すごくえらいのよ」

エレイア「まあまあ、レーシャ、知らない人とお話してはいけないのよ。
     さあ、あっちで遊びましょう?
     クマのぬいぐるみで遊ぶ?
     それとも、ご本を?」

▲2回目

レーシャ「………」

解説「話しかけても、返事がない。絵本に夢中になっているようだ」

エレイア「まぁまぁ、レーシャ。また<英雄の絵本>に夢中になって。
     この子はいつもそう。
     絵本に夢中になると、まるで
     魂が絵本に吸い込まれたかのようになってしまうのよ」
教会(函館病院

粗末な屋敷のいたるところに、傷病兵や病人が横たわっている。

傷病兵I「ここは教会さ。
     ……なに、そうは見えねェって?
     仕方ねぇさ。
     ここの神父さんがね、俺たち怪我人のために
     教会を解放してくださってからこっち、
     すっかり野戦病院になっちまった。
     申し訳ねェこった」

傷病兵II「薩長の兵は、無法者の集まりだ。
     女子供まで情け容赦なく殺して、強奪していく。
     もしも奴らが函館に入ったら、
     ここもどうなってしまうのか……」

傷病兵III「俺のような敵の兵士も、先生は分け隔てなく診てくださる。
     この怪我が治ったら、軍には戻らず、
     この教会で下働きとして働かせてもらうつもりだ」

傷病兵IV「(蠅が飛び回っている。既に死んでいるようだ)」

傷病兵V「函館の戦は、まだまだ序の口だ。
     戦が本格化すれば、この病院だけでは到底賄いきれまい」

傷病兵VI「……おっかぁ、おっかぁ……」

傷病兵VII「このようなところで、寝ている場合ではないのだ。
     土方先生が前線で独り、
     新撰組の旗を担いで戦っておられるのだ」

傷病兵VIII「先生は、素晴らしい方だ。
      俺たちみたいな下っ端も、丁寧に診てくださる」

傷病兵IX「先生と、その弟子の方々はいつ寝ておられるのだろう…」

病院の一番奥には、粗末ななりの神父が3人佇んでいる。
奥にはマリア像が一体だけひっそりと立っている。

ノートン「傷を負った者に、敵も味方もない。
     すべては神の御心のままに。
     この戦で負傷した者すべてを、この教会で治療するつもりだ」

ノートン「まだまだこの国で、キリストの教えを公にすることは難しい。
     旧幕府軍の榎本総裁は開明的な方だが、
     もしも函館が新政府軍の手に陥ちれば、
     我われに対する風当たりはますます強くなるだろう」

ルロイ「ノートン神父は、あのとおり、信仰に忠実な方です。
    しかし、これでは教会なのか病院なのかも判らぬ。
    隣の教会ほどとはいわぬが、
    私は見栄えも大事だと思うのですがね……」

レイモンド「神父の御志は尊いものです。
      しかし、薩長の鬼どもが進行してきた時……
      私は神父の御身が心配でなりません」

(発生条件)カディアンと話した後

ノートン「隣の仏閣かね。
     あちらがなにを言おうと、なにをしようと、
     私には関係ないことだ。
     私の信仰には、一点の曇りもないのだから」

ルロイ「あちらの神父、というか神主なんですかね…
    なんだかよくわかりませんが、とにかくカディアンという男は
    商売上手ですよ。
    役人たちにうまく金を掴ませて、
    寺とも教会ともつかぬものを作り上げてしまった。
    キリスト教徒には教会と言い、仏教徒には寺と言い、
    信仰もなにもあったもんじゃない。
    ひたすらお布施を巻き上げ、また、役人にばらまき、
    施設を拡げていく。
    それであのとおり、
    どんどん教会は大きくなっていくという寸法ですよ」

レイモンド「我われは、信仰でこの国を支配しようなどとは
      露ほども思ってはいません。
      ただ、救いを求めるものを救いたい、それだけなのです。
      なのに…それだけのことが、
      この時代にあっては、とても……とても難しいのです」
絢爛な仏閣

仏像や神像、キリストの十字架、マリア像などが無秩序に置かれている。

カディアン「私はカディアン。
      ここは、函館の民にも、異国の人々にも拓かれた信仰の場。
      仏も、神も、もとはひとつの絶対なるもの。
      さあ、祈りなさい。
      戦乱の苦しみも、汚濁の俗世も、神の前には無縁。
      私に財を預け、心安らかにただ祈るのです」

ブラウン「神は、貴方の信仰を問うておられる。
     俗世間の象徴たる金の香りを、神はお気に召さぬ。
     寄進はこちらへ、
     我われに財を預け、清らかとなった者の声だけが神に届くであろう」

ナリス「隣のような汚らしい教会では、
    神さまだって降りてきてはくださるまいよ。
    さぁさ、あんたも祈るなら、綺麗なこっちの方がいいだろう?」

セシル「カディアンさまを謗るものも、確かにいる。
    しかし、この時代にあって、民人には縋るものが必要だ。
    信仰の原理に凝り固まって、なにも為せぬならば、
    なんのための信仰か。
    よって、私はカディアンさまを支持する」
異人街の警備所
クラウド「私はクラウド、函館警備隊の分隊長です。
     本国からの連絡では、函館が戦場にならぬことは、
     既に、新政府軍、旧幕府軍の間で合意されているとのこと。
     しかし、私にはどうにも厭な予感がするのです……」

ケイリス「君も、警備隊志願の者かね。
     我われには、極東の小国で誰が政権を握ろうと関係はない。
     とにかく、我らが同胞たちの命と財産を護ることだけが使命なのだ。

     ……なに、志願の者ではない?
     ならば、それも良い。
     せいぜい我々の邪魔にならぬよう、外は出歩かぬことだ」

メテオロイド「俺の名はメテオロイド。
       賞金稼ぎだ。
       東の小国がきな臭いってんで、
       こうして出稼ぎにきたってわけだが…
       警備隊に来たのは、失敗だったかな。

       どうにも、あのケイリスって野郎が五月蝿くてかなわねぇ。
       しかも、人使いは荒くて、金払いは悪いときてやがる……
       これじゃあ、五稜郭旧幕府軍に行った方が
       良かったかもしれんな……
       もっとも、あっちはあっちで命の保証はできんか」

クラウド「ケイリス隊長ですか?
     根は悪い方ではないのですが、
     任務以外は関心がないといいますか……
     新政府軍の襲来に備えて、
     部下たちを不眠不休で沿岸警備に当たらせているもので、
     いい加減、不満も募ってきています。
     隊長に代わって、部下の休息を管理するのが私の仕事ですよ……」
五稜郭門前
門番「なんだ、お前は……!?
   戦時である。用のないものは立ち去れ!」
もとの路地裏(乞食の老人)

(発生条件)市街地区のすべての人物と会話を済ませていること、老人に3度以上施しを渡していること

老人「もし、そこの旦那さま…哀れな老人に……」

ゴルカス「……!」

解説「老人の執拗さに耐えかねて、振り払おうとしたその時」

老人「ん、つれないでないか、<霧を彷徨う者>よ」

解説「姿は、確かに乞食の老人だ。
   しかし、その皓々と光る双眸には見覚えがあるようだ。
   <絆人>エティスだ」

エティス「さて、他のものたちとははぐれてしまったようじゃが。
     それは、さほど気に病むことではない。
     主らに絆があれば、自ずとどこかで出会えようし、
     絆がないのであれば、如何に探し求めようとも
     二度とまみえることはあるまいでな。
     絆のあるがままに任せておけばよい。
     人の邂逅、営みとは、おしなべてそうしたものよ」

エティス「それよりも気になるのは、この地の瘴気の濃さじゃて。
     以前、儂が感じたことがある<魔>の波動よりも、まだ濃い。
     戦乱が<魔>を強め、<魔>が戦乱を深め、
     そして、それを覆い包む<混沌>が、
     この地に一種の結界を張ってしまったと見ゆる」

エティス「これはいささか厄介じゃぞ。
     いや、危難じゃな。
     <世界の欠片>には、もとの世界と強い繋がりを持った
     欠片もあれば、混沌に塗れ埋もれた欠片もある。
     この世界は後者じゃよ。
     異国から断絶した鎖国の地、
     旧弊の時代を呑みこみ、破壊せんとする時代。
     後の世はこれを<革命>と呼ぶやもしれぬ。
     しかし、後の世がない革命は、単なる世界の破滅にすぎぬ。
     もしも、主らが(あえて主ら、と呼ぼうぞ)この世界を抜けんと
     するならば、この世界を蝕む<魔>と対峙することじゃ」

エティス「なんじゃ、腰が引けておるではないか。
     しっかりせんかい。
     霧を……<混沌>を抜けんとする者が、
     <混沌>のひとつの具象にすぎぬ<魔>に
     畏れをなして、どうするね」

ゴルカス「エティス……!」

老人「……異国の旦那さま、哀れな老人にお恵みを……」

解説「その裾を掴んだ時、老人は既に物乞いの老人であった。
   エティスは去ったのだ。
   吹き抜ける北国の風に、
   エティスの嗤いを含んだ声が聞こえた気がする」

エティス「冒険者よ、<魔>の根源は五稜郭じゃ」

[3]函館市街戦の開始

(発生条件)エティスとの会話を済ませていること

 路地裏から市街地に出ていくと…

解説「市街地から喊声が聞こえる」

 街の人間が走って、逃げてくる。

男I「か、官軍だー!」

男II「薩摩の鬼共が攻めてきたぞー!」

男III「か、海軍が敗れたんだ…函館はもう、終わりだ」

翁「フガフガ…」

媼「私はまだお茶の途中なんですがねぇ」

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