新時代のソーサリアンを提案する

30周年を越えたソーサリアンの夢と妄想を語り続ける

最後の巨神(冒険の書&シナリオデータ)

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はじめに

 「神剣ジャイアントスレイヤー」は、「ソーサリアン」システムのシナリオとして書かれています。シナリオは4部構成のオムニバス形式となっており、各シナリオでそれぞれのストーリーは独立していますが、最終的に全4話で完結するように構成されています。

 シナリオ4「最後の巨神」は、その第4話です。

 カディアンの予言通り、封印されていた巨神が暴れだしカレーダ村を壊滅させた。ソーサリアンは伝説の剣「ジャイアントスレイヤー」を手に入れ、巨神を再び封印しなければならない。しかし、あまりに良くできた迷宮、解決が約束されたような伝承にソーサリアンは疑問を感じるのだった・・・。

 今度はソーサリアンから人間を学ぼうとする貪欲な巨神チッタを通じて、「人間とは?」という最終テーマに迫ります。

プロローグ

 巨大なモンスターがカレーダ村を襲う事件が発生した。村は度重なる襲撃で壊滅状態に陥ったという。今のところ、モンスターの標的はカレーダだけだが、いつ他の地方に被害が広がるか分からない。

 カレーダ村の村長の報告によると、モンスターはラナ湖の対岸にある遺跡から現れるという。遺跡はかつて地上で暴れていた巨神、タイタンを祭った所である。もしその伝承が本当で、暴れているモンスターが復活したタイタンだったとすると、一兵団を投入しても倒す事は不可能と思われる。

 そう判断した王は、歴戦の勇士ソーサリアンに事件の解決を依頼した。

登場人物

 ここでは主な登場人物の名前・年齢・性格・シナリオ中の役割などを記します。

チッタ(年齢不詳)

 巨神族の末裔タイタンの仮の姿。たびたび少年の姿を借りてソーサリアンの前に現れる。彼はソーサリアン達の冒険を見て楽しんでいるかのようだ。

ゴイル(625)

 “巨神の墓”を護るドワーフ族の賢者。チッタとは顔見知りだという。人間には無関心。

ビル(60)

 カレーダ村の村長。村の存亡を心配している。

ストーリー(要約)

 ソーサリアンはカレーダ村に到着した。
 元々貧しい村だったが、巨神の襲来でさらに荒廃が進んだようだ。
 村長のビルに話を聞いてみた。

「よく来て下さいました。
 遺跡からやってくる巨神によってこの村は壊滅してしまいました。
 ほとんどの村人は家を出て避難壕の中に隠れて暮らしています。
 何故か巨神は家や建物ばかり破壊して帰っていくのです。
 家を直してもすぐまた壊されてしまうのでもう誰も直そうとしません。
 村を捨てていく者も出始めました。何とか助けてください。
 情報は何もありませんが、この地方に伝わる伝承があります。
 何かの役に立つかも知れません。」
    
『かつて男は日々血を流し、鍛錬に鍛錬を重ね、戦士と呼ばれる人となる。
 そして今、戦士は巨神に立ち向かう。
 戦士は全てと引き換えに、神剣を得、巨神を倒す。
 戦士、勇者と呼ばれる人となる。
 しかし勇者は知っている。未来永劫、涙が流れぬ日は無いことを。』

 この村はラナ湖に面しており、遺跡は対岸にあるということだった。ラナ湖を渡し舟に乗って渡り、霧の深い湿地帯を抜けると巨大な石造りの遺跡が建っていた。

 ソーサリアンは遺跡に入った。湿地帯から流れ込んだのか、遺跡内にも霧が立ち込めている。しかしこの霧は違う。血を吸う霧、ミスト・バンパイアだ。この怪物は普通の霧と見分けがつかない。怪物を倒しながら探索を続けていくと、隠し扉を見つけた。ここから上へ上れるようだ。

 さらに探索を続けると、一人の老ドワーフが住んでいた。

「ワシはゴイル。この遺跡の管理人みたいなもんじゃ。
 ワシの部族は昔からこの遺跡の管理を運命づけられている一族なのじゃ。
 ワシが死んだら次の者が選ばれることになっとる。」

 ゴイルに巨神の事を聞いてみた。

「ああ、奴の事はよく知っておる。
 知っているもなにも、ここは奴の墓なのじゃ。
 お前達・・・
 元は神であったタイタンに太刀打ちできるとでも思っておるのか?
 まあできないこともないんじゃが・・・。
 とにかく、人間の村がどうなろうがワシは知ったこっちゃないよ。
 全ては神の意思。これが自然なのじゃ。」

 ソーサリアンはとにかく捜索を進めることにした。しばらくすると、小さな少年の姿を見かけた。しかし、少年はすぐ逃げてしまった。そんな事が何回か続いた。

 ゴイルに少年の事を聞いてみた。

「そうか・・・チッタに会ったか。
 あの子はたびたび私の元へもやってくるからよく知っておる。
 ・・・ふうむ。お前達、チッタに招かれたらしいの。
 すべてはあの子がこの遺跡に現れてから始まったのじゃ・・・。
 かつて地上で無法の限りを尽くしていたタイタンは、
 神剣ジャイアント・スレイヤーを持つ勇者によってこの地に葬られた。
 しかし、タイタンは元々神の一族。
 肉体が滅びても精神は永くこの遺跡をさまよっておった。
 ワシの先祖はその勇者に恩を受けたドワーフの族長で、
 そんな神を永遠に護る為に一族は遺跡の管理をしておるというわけじゃ。
 ところがある日この遺跡に、一人の子供がたどり着いた。
 名も知られておらぬその少年は死ぬ間際、こう祈った。

『神様・・・この世では地獄ばかり見ていました。
 このまま人を呪いながら死んだら
 きっと魂はこの世に縛られてしまうでしょう。
 どうか僕の魂を天上界へ召してください。
 僕には何もありませんが、この目、耳、口、手足があります。
 この身体を差し上げます。』

 かくして、少年の望みはかなえられた。
 巨神タイタンは魂を天上界に運んでやる代わりに少年の肉体を得た。
 そして・・・巨神は人間として生きていく道を模索し始めたのじゃ。
 ・・・そこから先はお前達の方がよく知っておるだろう。
 チッタと名のる巨神は、少年の肉体を持つが人の心は持たない。
 そこで人間界に波紋を投げかけ、心を学ぶことにしたんじゃ。
 召還魔道士カディアンを操ってな・・・。

 しかしチッタが事を起こすたびにお前達ソーサリアンが現れた。
 ・・・チッタはそんなお前達にきっと何かを感じたのじゃ。
 そして、お前達からその何かを学ぶ為に、
 この遺跡に呼んだのじゃよ・・・。」

 信じ難い話だった。しかし、ゴイルの次の一言で本当である事が分かった。

「誰から聞いたって?
 ・・・直接本人からきいたのじゃよ。
 全ては神の意思じゃ。逆らう事などできん。」

 とすると、村を襲う巨神を倒す事はできないのだろうか。

「いいや。この遺跡にはかつて巨神を倒した神剣、
 ジャイアント・スレイヤーが隠されている。
 勇者の資格を持った者なら必ずや見つけ出す事ができるじゃろう。
 ・・・そう言えばチッタは客人が来たらこれを渡せと言っておった。」

 そう言うと、ゴイルは『過去への鍵』を手渡した。

「チッタの考えはワシも全て理解しているわけではない。
 しかし、この鍵が謎を解くきっかけになってくれるじゃろう。」

 『過去への鍵』は遺跡内のいくつかの金属プレートを外す事ができた。『過去への鍵』で外す事のできたプレートは3枚で、3枚のプレートの中には村長から聞いた伝承の一文、「かつて男は日々血を流し」「鍛錬に鍛錬を重ね」「ついに戦士と呼ばれる人となる。」がそれぞれ書かれていた。プレートの横には扉がついている。ソーサリアンはプレートの一文が文章になる順番に、扉をくぐってみた。すると、最後の扉をくぐったとき、扉の横には赤い宝石がはめ込まれていた。これは『血の結晶』だ。

 『血の結晶』は遺跡のプレートのある階よりさらに上の階層の、4つの穴に収まる大きさだった。『血の結晶』をはめ込んだ穴によって、上の階層の状況が変化しているようだった。

 一番左の穴にはめたとき、上の階層で “神の剣へ続く印 \T\B” というメッセージを見つけた。
 一番右の穴にはめたとき、上の階層で “鏡の世界へ続く印 TB\\” というメッセージを見つけた。
 また、左から3番目の穴にはめたとき、上の階層で『未来への鍵』を手に入れることができた。さらに、残りの穴に『血の結晶』をはめたとき、『現在の鍵』を手に入れたが、この鍵はプレートの鍵穴には合わなかった。

 残りの金属プレートは『未来への鍵』で開けることができた。プレートの中には「勇者は知っている」「未来永劫」「涙が流れぬ日は無いことを。」というメッセージがそれぞれ書かれている。伝承の通り、その文章を並べ、プレートの順に扉を通った。すると3つ目の扉の脇に『涙の結晶』をみつけた。

 『涙の結晶』もまた、“4つの穴”に収まる形をしている。『血の結晶』と組み合わせる事で、さらに遺跡に変化が発生することが分かった。

 そして、“神の剣へ続く印 \T\B”に従い、『涙の結晶(T)』『血の結晶(B)』を配置した状態では、プレートの鍵穴は『現在の鍵』に合うように変化する事がわかった。過去と未来の間にある伝承の一文の通りに扉をくぐると、チッタのいる部屋にたどり着いた。

 部屋の中心には光を放つ剣が置かれている。これが、ジャイアント・スレイヤーのようだ。

 それにしても何とよくできた迷宮なんだろう。宝を隠すためというより、謎を解いてもらうために迷宮があるような錯覚に陥る。
 ジャイアント・スレイヤーに手を伸ばすと、チッタは笑った。

「へへへ・・・。その剣は鏡に映っているだけだよ。
 剣は鏡の中の世界にあるんだ。」

 鏡の縁には“鏡の世界へ続く道 LRLL”というメッセージがある。鏡の中の世界・・・急いで、“4つの穴”に戻り“鏡の世界へ続く印 TB\\”に従い、宝石を配置した。すると遺跡の上の階層は、扉をくぐっても同じ場所に戻ってしまう部屋に変化した。

 そこでLRLL、つまり左、右、左、左、の順に扉をくぐると、少し様子が違う部屋に着いた。ここは、“鏡の中の世界”だ。

 宝石の配置を変え、“神の剣の部屋”へ突き進む。そこにはミラー・デーモン、サイクロプスという強力なモンスターがいたが、なんとかそれらの怪物を倒し、ついに『ジャイアント・スレイヤー』を手に入れた。

 『ジャイアント・スレイヤー』を手に持ち、再びチッタの部屋に行った。

「あ、神剣を手に入れたんだね。じゃ、最後のゲームだよ。」

 そういうと、チッタは巨神タイタンに変身を遂げた。タイタンには魔法も効かず、弱点を言われる眉間にも剣は届かない。

 作戦を変更し、巨神を遺跡の外におびき出すことにした。
 遺跡を出る前に、ゴイルに今までの話をしてみた。

「ふうむ・・・そうか。
 チッタはお前達と知恵比べをすることに楽しさを感じておるに違いない。
 はやくそのジャイアント・スレイヤーで巨神を葬り去るのじゃ。
 そのとき、チッタの望みはかなうのじゃろう・・・。
 奴の急所は眉間じゃ。」

 ソーサリアンは湖に巨神を誘い出しす事に成功し、ついにタイタンの眉間にジャイアント・スレイヤーを突き刺した。タイタンはバラバラに崩れ、湖底に沈んだ。そして、チッタの最後の声が聞こえる・・・。

「あー楽しかった。ありがとう、ソーサリアン。またあそぼうね。」

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