少女は英雄を語りて(冒険の書&シナリオデータ)
プロローグ
ある日、私は道端に落ちていた一冊の本を拾った。
それは焦げ茶の本皮が張られた高価そうな分厚い本で、背と表紙には金の文字で「終わらない物語」と箔押しされていたのを覚えている。
だが、不思議な事に著者名だけは表面上の何処にも見当たらなかった。
私は冒険者ではあるが、休日は専ら本を読み漁る程の読書家であると自負している。その私が本を拾ったとなれば、どのような行動に出るかは言うのも野暮だろう。
もしかしたら顔も知らぬ誰かの手記である可能性もあったが、ここまで立派な装丁で題名まで書かれているのだから、きっとこれは読み物に違いない。
私の中で湧き上がる好奇心がそんな勝手な言い訳を頭の中で展開し、私の手はそれに倣って表紙をゆっくりと捲った。
……ここまでが、私が覚えていた事になる。
気が付けば私は道端で恥ずかしげもなく寝転がり、霞掛かる意識のまま横に首を傾ければ馬車が迫ってきていたのだから、意識の覚醒は早かった。
過ぎ行く馬車を見送った後、私は本を読んでいた事を思い出して己の手に視線を向けた。
しかし、私の手の中はおろか、周辺でさえもあの本は影も形もなかったのである。私の記憶にある筈の物語の内容さえも。
こんな馬鹿げた話があるだろうか! 本を読んだというのに、感想も感動も抱けないというのだから!
まあ、私が本を拾う夢を見ていたのだとしたら、全ての辻褄は合うのだが、これが現実にせよ夢にせよ、内容を覚えていないというのは何とも勿体無い。
私は自分自身に腹を立てた。だが、こんな場所でいつまでも地団駄を踏んでいる訳にもいかない。
いずれまた同じ夢が見れる事を祈ろう。――そう諦め、次の機会に期待し、私はペンタウァ方面に向かって歩き始めたのだが。
ふと脳裏に浮かんだ、あの本の冒頭に書かれた一節。私は無意識の内にそれを声に出していた。
『これは、貴方が絵本の世界を救うか否かの物語。』
冒険の目的
手にした筈なのに消えている。読んだ筈なのに覚えてない。ペンタウァではそんな『消える本』の噂が徐々に広まってきている。
その本が夢なのか幻なのかは、今も誰一人として分かっていない。何せその本自体が何処にあるのか分からないのだから。
だが、害とも益ともつかぬ謎を放置する訳にはいかないだろう。天変地異の前触れだったとしたら、手遅れになるかもしれないのだ。
読書好きも読書嫌いも、この際問わぬ。勇気ある者はこの『消える本』の謎に挑んではくれないだろうか。
- このクエストに人数制限はありません。
- 出発前に凍結・呪い対策をしておいた方が良いでしょう。
- シナリオレベルは3くらいですが、敵の強さは4〜5並かもしれません。
- プレイ時間は30分〜1時間半くらいが目安です。
本シナリオのポイント(という名の反省)
「謎の絵本と不思議な少女」というキーワードから妄想を拡げていった結果がこのシナリオです。MD版の「マリオネットのやかた」のストーリー展開にとても興奮した事もあり、着想はこのシナリオから得たと言っても過言ではありません。
又、二作目のシナリオが読み物に近くなっていたのを反省し、今作は初心に帰って文章を大分シンプルしようと試みました。……が、題材が少々ややこしい為、その解説で文章量が多くなっている箇所が多々あります。
ゲーム性についてですが、今までよりも謎解き要素を増やし、敵を全体的に強化してあります。それに伴い、アイテムの性能も高めに設定しました。時空とか色々小難しい事を書いていますが、要は「ペンタウァではない場所が舞台」「時空を操る=瞬間移動出来る・外界(異界)と異空間との行き来が可能」と考えて頂ければ(ただし今作では、『神々の強い力が働いていて、過去や未来を行き来する事は出来ない』という設定です)。
舞台
※専用シナリオシート参照
☆謎の回廊
☆少女の部屋
☆異次元塔ディ・メンジェス
☆草原
登場人物
※専用シナリオシート参照
ポーラス | 絵本を書き続ける少女。とても強い魔力を秘めている。とある事件以来、部屋の外に出られなくなってしまった。 |
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収集家グリメルム(ボス) | 箱庭作りが趣味の自称収集家。数百年の時を生き、時空を操る能力を持っている高位魔族。 |