新時代のソーサリアンを提案する

30周年を越えたソーサリアンの夢と妄想を語り続ける

怒りの追撃(冒険の書&シナリオデータ)

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はじめに

 「神剣ジャイアントスレイヤー」は、「ソーサリアン」システムのシナリオとして書かれています。シナリオは4部構成のオムニバス形式となっており、各シナリオでそれぞれのストーリーは独立していますが、最終的に全4話で完結するように構成されています。
 シナリオ2「怒りの追撃」は、その第2話です。

 王都からクリート山へ続くコシュー運河沿いで凶悪な強盗殺人が発生した。ソーサリアンは罪を犯しながら逃走する犯人を追いかけます。しかし、犯人を山小屋に追い詰めたとき、彼の告白は意外なものでした。誤解を受けて逃走を続ける神官と悩める沿岸警備官を通じて、人に信用されるにはどうすればよいか、を考えさせるシナリオです。

 また、このシナリオはイベント実行状況により、終了時のストーリーが変わるマルチエンディングを採用しています。

プロローグ

 コシュー運河はクリート山と王都を結ぶ国の動脈である。この運河の沿岸にはクリート山で伐採された木材を加工する材木職人街と、それらを扱う卸市場が発達していた。また、商人をはじめとした運河を行き交う人も多い為、宿場町も点在する。

 そんな運河沿いの宿場町、キャナルフォードで凶悪な犯罪が発生した。犯人は教会への寄付金を着服し、それがばれると逃走資金の為に罪もない一家を全員惨殺するという事件を起こし、運河沿いを逃走中だということだった。

 コシュー運河沿いの治安を守る沿岸警備隊は、早くからこの事件の捜索を開始し、犯人を追っている。しかし、今のところ犯人を逮捕したという報告は王の元に届いていない。そればかりか、ダムサの町でも2度目の殺人事件が発生してしまった。

 そしてその犯人は魔法をも使いこなすという報告が入り、ついに王はコシュー運河にソーサリアンを派遣する決意をしたのだった。

舞台

 設定資料の「第2章 ステージ構成」を参照してください。

登場人物

 ここでは主な登場人物の名前・年齢・性格・シナリオ中の役割などを記します。

ケイリス(29)

 コシュー運河を守る専門兵団、沿岸警備隊の隊長。正義感に燃えており、頭も冴えている。隊長になって1年、政治的手腕は優れているものの、今まで何故か結果を出せないでいる。

 今回の事件で犯人を捕らえることを手柄と考え、何としても良い結果を王都へ報告したいと思っているようだ。ソーサリアンには協力的。

ノートン(45)

 お尋ね者の元神官。聖職者でありながら教会の金を着服したため追放となり、その後、コシュー運河沿いの町々で強盗殺人を繰り返しながら逃亡を続けている。

クラウド(27)

 ケイリスの部下。与えられた仕事はきっちりこなすが、ケイリスをあまり良く思っていない。

ウォーリー(60)

 宿場町キャナルフォードの町長。ノートンを町から追放した。普段は温和な男なのだが、ノートンに対しては相当な怒りを抱いている。

レイモンド(35)

 キャナルフォードの神官。教会への寄付金を盗んだとしてノートンを告発した。

ハースト(68)

 商業の町ダムサの町長。町で発生した連続殺人事件に頭を悩ませている。

サザール(40)

 ダムサに滞在していた商人。ノートンに賞金を賭けている。

メテオロイド(32)

 賞金稼ぎの魔法戦士。サザールに雇われ“ドラゴンの瞳”を探索するが・・・。

ナッシュ(55)

 炭焼き職人の町ロプキスの町長。ノートンをかくまった疑惑が持たれている。

ルロイ(41)

 ロプキスの神官。意思の強い人物。

ライトル(57)

 クリート山の伐採責任者。最近、人夫たちが荒れているという。

 他、町民たちなどが登場。

ストーリー(要約)

 ソーサリアンが宿場町キャナルフォードに到着すると、キャナルフォードの町長、ウォーリーが直々に出迎えてくれた・・・というのは少し良く言いすぎのようだ。あまりの怒りでいてもたってもいられなくなり、外で待っていたようである。

「遅かったな、ソーサリアン。沿岸警備のケイリス隊長はとっくに出発してしまったよ。」

 ウォーリーによると、1週間前、町から集めた教会への寄付金を神官が盗むという事件があったそうだ。その神官は名をノートンと言い、そのとき盗まれた金は小額だったので、特に返還を求めずウォーリーはノートンを町から追放した。

 そして4日前、農家を営むランス家の一家3人の惨殺事件が発生した。ランス家には代々伝わる秘宝“ドラゴンの瞳”があり、犯人はそれが目的だったらしい。凶器はノートンが得意としていたウォーハンマーのような鈍器だった。町の人々の声を聞いてもノートンに対する評判は悪く、皆怒りに満ちていた。

 さらにウォーリーは続ける。

ノートンはこの先のダムサの町でも盗みを働いてお尋ね者になっていると聞く。沿岸警備隊が調査に乗り出しているのだが、ノートンはもう町から追放したってのに、分隊クラウドが町に残っているんだ。全く迷惑な話だよ。」

 分隊長のクラウドの話によると、ノートンは街道を逃走中で、ケイリスはそれを追ってダムサへ向かったという。もしノートンが引き返してきたら挟み討ちにするために分隊キャナルフォードに残しているとの事だった。

 ソーサリアンノートンを追ってダムサの町へやってきた。ダムサではノートンはお尋ね者となっており、賞金が懸けられていた。賞金を懸けたのはダムサに滞在している商人サザールだった。サザールによると、3日前にノートンと名のる男が、秘宝“ドラゴンの瞳”を買い取らないかという話を持ちかけてきたという。しかし取引に出向いたサザールの手下は全員殺され、金は奪われた。

 サザールは手下に護衛をつけていたのだが、どうも殺しには魔法が使われたらしい。この段階で王都に報告が伝えられ、ソーサリアンに要請が来たようだ。この後、サザールはノートンに賞金を懸けたということだった。

 サザールはすでにメテオロイドという通り名の魔法戦士を雇っていた。メテオロイドは水晶球の前で何やら大掛かりな呪文を唱えていた。彼によると、“ドラゴンの瞳”は魔力を秘めた宝石で、常にある一定の魔法的な波動を放っているという。この魔法が成功すれば、“ドラゴンの瞳”の波動をキャッチすると水晶球に映しだし、さらに上手くいけば水晶球からノートンごと宝を取り出すことができるのだそうだ。

 ダムサの町長ハーストはこの事件によって商人がこの町に立ち寄らなくなってしまうことを恐れていた。協力したいが、ノートンに関する情報は何も無いと言う。沿岸警備隊長ケイリスもここでの捜査は諦めてこの先のロプキスへ移動していったらしい。

 ソーサリアンもケイリスを追ってロプキスへ行く事にした。

 ロプキスでは連続殺人事件が発生し、人々は恐怖と怒りにふるえていた。ここでようやく沿岸警備隊のケイリス隊長と会うことができた。

「遅かったな、ソーサリアン。とにかく状況だけ手短に話そう。
 この町ではこの2日間で3人が殺され、金品を奪われている。この町の東の門は封鎖したから、ノートンは少なくともキャナルフォードとこのロプキスの間にいると思う。我々も捜査を続けているからそちらもがんばってくれたまえ。」

 次にソーサリアンはロプキスの町長ナッシュに話を聞いた。

「あ、いや本当にノートンについては知らないんだ。変な意味に取らないでくれ。散々ケイリスにも聞かれたんだ。ノートンが許せないのは確かだが、知らないものは知らないんだ。かばったりはしてないよ。」

 どうもナッシュは相当な追及を受けたようである。かなりおびえた表情だった。落ち着くまで少し待ち、再びナッシュの家に赴いた。

「ああ、ソーサリアンか。実は・・・冷静になって考えてみると、おかしな点があるんだ。殺された3人はみんなカマのような鋭利なもので首を切られていた。しかし、ノートンの武器はウォーハンマーだと聞いている。そういう意味でちょっと矛盾があるのだが・・・。ケイリスはあまり気にしてないようだがね。」

 ソーサリアンは、念の為殺人があったダムサとロプキスの間の祠付近を調査することにした。祠付近は特に変わったことはなかったが、よくみると台座の上に妙な像が立っていることに気付いた。最初にロプキスを訪れたときには無かったものだ。その像をもっとよく調べようと近づくと・・・。

 突然像は動き出し、カマのような腕で首筋を狙ってきた。この像はマンティスマンだったのだ。ソーサリアンは落ち着いてこのモンスターを倒すと、マンティスマンが盾の形をした飾りがついた首飾りを身に付けているのに気付いた。

 首飾りを殺された職人ジャンの家族に見せると、確かにジャンのものだと言う。3人は、マンティスマンの餌食になったのだ・・・。

 急いでこの話をケイリスにしようと思ったが、すでにケイリスはノートンを追ってクリート山に出発していた。そこでナッシュ町長に話しをすることにした。

「そうか・・・マンティスマンが・・・。3人とも気の毒に・・・。

 と、ところでこの話はできたらケイリスにはしないでほしいんだ。ケイリスはノートンを捕らえることで頭がいっぱいで、私がノートンをかくまっているような疑いも持っているようなんだ。ここで『ロプキスの殺人はノートンが犯人ではない』なんて噂を流したら、何を疑われるか分かったもんじゃないよ・・・。

 せっかくケイリスがクリートに行ってくれたんだ。ノートンが捕まるのも時間の問題だろう。それまでこのことは黙っててくれないだろうか。ノートンが捕まった後にきちんと報告するからさ。」

 ソーサリアンは、ケイリスの後を追ってクリート山に出発する前に、ロプキスの教会へ行ってみた。1階には神官がいるはずなのだが何故か見当たらない。2階の屋根裏から何か物音が聞こえた。不審に思ったソーサリアンは2階に上がると・・・。

 そこには5匹のスペンド・デビルがこの教会の神官ルロイと対峙していた。スペンド・デビルはソーサリアンが部屋に入ると形勢不利とみたか、窓からダムサの方角へ飛び去って行った。

 それにしてもなぜ教会に悪魔などいたのだろう。ルロイに話を聞いてみた。

「悪魔に教会が狙われるなんて恥ずかしい限りです。しかし、よく考えてみるとノートンの事件があってから私も怒りと猜疑心に心が冒され、知らず知らずのうちに悪魔につけいる隙を与えていました。悪魔が一番いないはずの教会を隠れ家にしようとはさすがに狡猾なやつらです。・・・もしかするとノートンも悪魔に付け入られたのかもしれません。」

 こう言ってルロイは十字架を手渡した。

「これは『信仰の十字架』です。悪魔に心を冒された神官に見せれば、きっと信仰心を取り戻すでしょう。」

 ソーサリアンは次の行先を考えた。沿岸警備隊によるとクリート山にノートンがいるという。しかし、ダムサの方に飛び去った、スペンド・デビルも気になる。山に行けばノートンを捕らえることができるかもしれないが、ノートンのロプキスでの疑惑は晴れている。もしかするとキャナルフォード、ダムサの事件にも何か残された秘密があるのではないだろうか?

 ここは、スペンド・デビルを追ってダムサに戻ることにした。
 ソーサリアンはダムサに戻り、サザールの隊商を訪れた。
 ・・・そこで、血まみれで息絶えているサザールを発見した。その時、奥の扉からスペンド・デビルが姿をあらわした! 一瞬、緊張が走ったが、スペンド・デビルは粉々に崩れ、後ろから傷だらけのメテオロイドが剣を構えて出てきた。しかし、彼もかなりのダメージを受けているようだ。

「へへ・・・。魔法は成功したが水晶球から悪魔が出てくるとは思わなかったぜ・・・。ドジ踏んじまった・・・。」

 ということは、“ドラゴンの瞳”を持っているのはスペンド・デビルなのだろうか。メテオロイドのよると、一匹のスペンド・デビルは倒したが、残りの4匹はほとんど無傷で飛び去ったと言う。

「おまえ達なら、あの悪魔を倒すことができるかもしれんな・・・。“ドラゴンの瞳”のありかならまだ水晶球に映っているはずだ・・・。」

 ソーサリアンは奥の部屋にある水晶球をのぞいた。そこには、キャナルフォードの教会が映っていた。そして、水晶球に手を触れると、身体が水晶球に吸い込まれ、一瞬のうちにキャナルフォードの教会に降り立った。

 教会の神官レイモンドは相変わらずノートンへの怒りを口にしていた。ソーサリアンは『信仰の十字架』を見せた。レイモンドは一瞬、口を閉ざしたが、教会の屋根裏に悪魔が巣食っていることを告げた。

 ソーサリアンは急いで屋根裏に上がりそこにいた4匹のスペンド・デビルを退治した。そして、その部屋で“ドラゴンの瞳”、教会への寄付金とランス家の殺害に使われたと思われるウォーハンマーを発見した。

「すみません。あなた方が来なければ私も悪魔になっていたでしょう。いや、すでに悪魔だったのです。寄付金が盗まれたとき、確かに教会にはノートンしかいませんでした。しかし、悪魔はすでに巣食っていたのです。私はそれを認めたくないために全てノートンのせいにしてしまった・・・。」

 レイモンドの告白で、キャナルフォード教会の盗難事件、ランス一家の殺害、ダムサでの一連の事件の犯人はノートンに巧みに罪をなすりつけたスペンド・デビルの仕業だと判明した。ノートンは無実だ。

 ノートンが無実であることを町長たちに報告しつつ、クリート山に向かった。しかしキャナルフォード、ダムサの町長は共に、それは私は知らなかったことにして欲しい、と口をそろえた。どうもケイリス隊長に今までの報告を訂正するのが嫌なようだ。きっと報告には嘘も混じっていたに違いない。それにしてもケイリスがここまで嫌われているとは・・・。悪い人間とは思えないのだが。

 ソーサリアンクリート山に到着した。ケイリス隊長にノートンが無実であることを報告したが、なかなか信じられないようだ。

 無理も無い。いままでノートンに対する怒りの声しか、町の人々から聞いていないのだから。

 ノートンは山道の奥に追い詰められているようだ。捜索の為、ソーサリアンも山に入った。山道ではスペンド・デビルが集団攻撃を繰り返して来る。それらを倒しつつ、奥へ進むと傷ついた神官の姿があった。彼が、ノートンだ。

「そうか・・・私の無実を晴らしてくれたか・・・。私が悪魔に陥れられたとき、町の人々は怒りのあまりで私の話を全く聞いてくれなかった・・。私はその怒りの根源を絶つためにここまでやってきたが、もうやつを倒す力は無い・・・。やつは、この奥にいる・・・。」

 その根源とは“怒りの精霊”なのだという。このモンスターの放つ波動が沿岸の人々の心に隙間を作り、悪魔をがつけいる原因となったのだ。

 “怒りの精霊”は伐採場の山小屋にいた。魔法を使ってくる手強い敵だったが、魔法と武器の併用で何とか倒すことができた。“怒りの精霊”を倒したことで、運河沿いの人々の心に穏やかさが戻り、悪魔も姿を消したが、いったい何故このようなモンスターが出現したのだろうか。

 この謎は不明のままだ・・・。

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