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30周年を越えたソーサリアンの夢と妄想を語り続ける

はじまりのゼロ SS「五稜郭炎上 - 没:物語消ゆ」(2)

共同執筆作品(リオ担当)

はじまりのゼロ Second Stage「五稜郭炎上」(http://d.hatena.ne.jp/sorcerian/20140114)の没シナリオです。
五稜郭炎上」は長篇シナリオということもあり、当初の予定から大きく物語が変化し、結果として、泣く泣くボツとなってしまったシーンがいくつかありました。

本来であれば、没シナリオは潔く闇に葬るべきものですが、そのままハードディスクの肥やしになるのも忍びなく、転⇒結に入る直前の、この段階で晒してみます。本編とはなんら関係ありませんので、「君はこれを読んでもいいし、そのまま無視しても構わない」。

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はじまりのゼロ SS「五稜郭炎上 - 没:物語消ゆ」(2)

作者より
[起]旅人彷う(デュエル編)の第1版として作成したシナリオです。 没:物語消ゆ(1)と違って、ストーリーの大まかな流れは、現在のものとそれほど変わりありません。

ただ、第1版では

  • 大鳥のキャラがあまりに薄っぺらかった
  • 展開が唐突すぎて、導入がわかりにくかった
  • 登場人物が不足していたため、後続のストーリーが展開しにくかった

などの自省から、登場人物を拡充した第2版の作成となりました。

ただ、副管理人のときのじさんからは「第1版のシンプルさも捨てがたい」という評価を得たため、こちらはこちらでアリだったのかと、没編での公開に至りました。

こってり版とシンプル版と、皆さんはどちらがお好みでしたか?コメント欄でひとことどちらと入れていただければ、とてもうれしいです。

[1]スタート地点。とある平原、戦場に立つデュエル

 白兵戦のただ中のデュエル。
 ぼんやりしているデュエルに、敵兵が襲い掛かる!

デュエル「……!」

 脇から躍り出た兵士が、敵兵を斬り捨てる。
 そのうしろから、将兵らしき男が走り込んできて…

仲間らしき将兵「ブ、ブリュネ中尉、
   な、な、な、な、なにをぼんやりされておる!?」


 その時、近くの兵士が鉄砲の弾で倒れる。

仲間らしき将兵「ひ、ひいいいぃぃぃ!
   ブ、ブリュネ中尉、もう松前はダメだ…!
   し、新政府軍は、す、既に後方の木古内に
   侵攻しているとの、ゲホッ、ゲホッ、噂もある。
   早う撤退を、もとい、陣を立て直して、
   再起を図ろうではありませんか!」

別の兵士「大鳥さま、退路が…!退路が断たれます!
   お急ぎください…!
   う、うわぁぁぁ…!」

大鳥「う、うわぁぁぁ!
   ブ、ブリュネ中尉、お先に失礼しますぞ…!」

 大鳥と呼ばれた将兵は、兵士に守られて、そのまま画面の外へ走り去る。

解説「どうやら自分はブリュネとかいう中尉に間違われているようだ。
   状況はわからないが、まずは己の安全を確保するのが優先だろう。
   敵兵を斃しながら、大鳥と名乗る将兵が向かった方角へ急ごう」

 敵兵との戦闘開始。
 戦闘そのものは必須ではないが、一定数を斃さなければ、どんどん
 敵が増えてきて、追いつめられてしまうので注意。
 ただし、戦いに専念しすぎても、仲間の兵士が減り、加えて、武器の
 損耗が激しくなるため、程よく逃げつつ、程よく戦うバランスが必要。

 一定の距離を逃げ延びると、画面フェードアウト。

[2]逃げ延びた旧幕府軍陣営(木古内の夜)

 夜の木古内。そちこちに負傷した兵士たちが倒れている。

解説「どうやら夜になって、敵の追撃も止んだようだ。
   しかし、<仲間>の損害も大きいようだ。
   ゴルカスやクリスティの姿も見当たらぬようだし、
   まずは己の置かれた状況を把握した方が良さそうだ」

 兵士たちに話しかけていく。

大鳥圭介「おぉ、ブリュネ中尉、無事であられたようでなによりです。
   本日の戦では、不覚にも、
   薩長の賊ばらに後れをとってしまいましたが、
   木古内には我らが伝習隊や額兵隊も駆けつけてくれた様子。
   明日は、松前の奪還といきますか、はっはっは」

伝習隊士I「ブリュネ中尉、ご無事でなによりでございます」

伝習隊士II「大鳥さまは、優れた将であられる。
     政略にも戦略に富んだお方と言えよう。
     大砲の弾が飛び交う前線にさえ、出てこられねばな」

伝習隊士III「せめて土方先生がおられれば……」

伝習隊士IV「函館政権は、この国の最後の良心なのです。
     謀略と暗殺でこの世を築いた薩長の姦夫どもが
     正義であるならば、正義とはなんなのか……」

額兵隊士I「五稜郭の榎本総裁は、今の状況をどのようにお考えなのか。
     噂では、五稜郭では既に
     降伏の決定が為されているというが……」

額兵隊士II「みなは土方先生を軍神と崇める。
     しかし、あの人は函館を死に場所と決めているのではないか。
     俺は、まだ死にたくはない」

額兵隊士III「榎本さんも大鳥さんも、所詮は政略の人なのだ。
     前線に出てきても役に立たぬ大鳥さんと、
     ここに至って、五稜郭で連日会議を開いている榎本さんと、
     いずれがマシというのだろうか」

額兵隊士IV「大鳥さんは、なにを考えておられるのか。
     松前では敵前逃亡した人が、
     援軍を得た途端に再戦とはちゃんちゃらおかしい。
     松前が陥ちた以上、函館に兵を集結させるべきなのだ」

遊撃隊兵士I「我われは命など惜しくはない。
     ただ、逆賊の汚名を着たままでは死んでも死にきれぬのだ」

遊撃隊兵士II「俺はね、鳥羽伏見から幕府の側で戦ってきたのだ。
     大阪へ逃れ、江戸に落ち、奥州に追われ……
     函館の最果てまでくれば、もう十分ではないかね」

遊撃隊兵士III「ブリュネ中尉、異国の戦に義を以て参戦くださる
     あなた方フランス士官に敬意を表します」

遊撃隊兵士IV「榎本総裁は五稜郭に籠って、兵の前に姿すら現さぬ。
     武のお人ではないとはいえ、
     あのようなお方ではなかったのだが」

遊撃隊兵士V「薩長は幕府から将軍の地位を奪い、土地までも召し上げた。
     それも、すべてを謀略によってだ。
     俺には、そんな奴らに錦の御旗を奉る
     帝のお気持ちが理解できぬ」

 倒れている兵士を調べると…

兵士I「ブリュネ中尉、おしりに話しかけないでください」

解説(兵士II)「返事がない。ただの屍のようだ」

解説(兵士III)「返事がない。ただの屍のようだ」

兵士IV「膝に弾を受けてしまってなぁ…」

兵士VI「油断してこのありさまよ。
    このありさまでは儂も長くはあるまいて。
    こんな戦で、お主はしぬでないぞ」

解説(兵士V)「返事がない。ただの屍……ではない!
    目をカッと見開いて、裾を掴んでくるではないか。
    しかし、その手は屍そのままに冷たく氷のようだ」

兵士V「フォフォフォ……儂じゃ、儂じゃよ」

解説「その諧謔に満ちたしわがれた嗤いには、聞き覚えがある。
   霧の中の老人…」

エティス「エティスじゃよ」

エティス「儂ほどの魔導士になろうと、念話だけでは疲れるでのぅ。
   とりあえず口を借りるだけであれば、屍でも問題はあるまいて。
   なに、気味が悪いとな?
   なんの、つい数刻も前までは主らと同じ側にいた者ぞ。
   精神体があるかなきかで、大差はあるまいに。
   しっかりせい」

エティス「それよりも、畏れるべきは、この地の<魔>の瘴気よ。
   <混沌>の尖兵を自ら担った者どもよ。
   <混沌>の遣いを気取り、世の破滅を望むと信じ、
   その実体は、<混沌>に心を奪われた傀儡の者たちよ。
   彼奴らが何を求めて、この地に降り立ったかは知らぬ。
   ただ、主らがこの世界を抜けんとするならば、
   自ずと<魔>に対峙することになろうて。
   両者の求めるものが世界の要(かなめ)、
   世界を維持し、世界を繋ぐ鍵である限り、
   それは避けられぬことなのじゃ」

エティス「なに、仲間たちのことを教えてほしいとな。
   さてさて、<魔>と聞いて、恐ろしゅうなったのかの。
   なに、主らの目的が同じである限り、正しい選択をする限り、
   彼らとは自ずと相まみえることになろうて。
   それが運命(さだめ)というものじゃ。
   もしまみえぬのであれば、
   それは最初から運命を共にする者ではなかったということじゃな。

   <魔>は、世界を支える要を求めておる。
   この世の破滅のために。
   そして、主らは、世界の要を必要とするじゃろう。」

デュエル「エティス……!」

解説(兵士V)「返事がない。ただの屍…に戻ったようだ。
        夜が、明けようとしている」

[3]木古内防衛線

 再び白兵戦のただ中。大鳥たちが逃げてくる。

大鳥「ひけ、ひけーー!
   に、逃げ…撤退するのだ!」

伝習隊士I「イギリスが中立の約定を反故にしたのです。
      イギリス艦で、新政府軍2000が松前上陸したとのこと」

伝習隊士II「こうなる前に撤退していれば、逃げ切れたろうに……
      彼我の戦力がここまで離れていては、撤退も困難かと」

大鳥「ブ、ブリュネ殿、すまぬが、
   殿(しんがり)をお願いできぬだろうか。
   拙者は、五稜郭への報告を急がねばならぬのだ」

解説「了解しますか?」

(はいを選択した場合)

大鳥「おぉ、流石はブリュネ中尉、恩に着ますぞ!」

(いいえを選択した場合)

大鳥「ブリュネ殿、これは陸軍奉行としての命令にござる。
   フランス士官と雖も、この場では拙者の指揮に従って戴きたい」

 いずれの場合も、言い捨てるや、大鳥はそのまま逃亡。

 敵兵との戦闘開始。

解説「まだ撤退しきれていない兵士が残っているようだ。
   彼らが離脱するまで、この場を離れることはできない」

エティス「お人よしじゃのぅ…」

解説「嗤いを含んだ風が通り過ぎたような気がするが、
   気にしている暇はない。
   とにかく敵の数が多いのだ。
   なるべく回り込んで、一撃で斃すことを心がけろ!」

 以降、一定時間、その場で敵兵を斃し続けなければならない。
 ただし、武器の損耗をおさえるため、できるだけ相手の弱点を突きながら
 倒していくこと。手持ちの武器が破損した場合はGame Over。
 一定時間が経過すると…

味方の兵士「ブリュネ中尉、これ以上は無理です。離脱してください!」

 と同時に、敵兵が雲霞のように押し寄せる。

解説「あの軍勢に巻き込まれたら、ひとたまりもないぞ!」

 逃亡開始。
 以降、地形トラップを抜けながら、一気に走り抜ける!

◆森
 「紅玉の謎」のような上下アップダウンのあるステージ。
 茂みや木の洞に抜け道が用意されていたり、毒槍の罠があったりするので、
 道を見極めながら進んでいく必要がある。

◆川
 急流がスピード感あるステージ(斜め上視点で手前/奥への移動も可能)。
 小舟が用意されているので乗ると、自動的に進んでいく。

解説「<びぃた>を左右に傾けると、船の速度を調整できるし、
   上下に傾けると、手前/奥に移動できるぞ。
   落下する砲弾や、渦巻きを避けながら進んでいこう。
   船は一定のダメージを受けると、壊れてしまうぞ」

 敵兵が船の上に乗って攻撃もしかけてくるので、適宜倒していく。
 川の最後は滝になっているので、落ちる前に手前の岩棚に飛びつく必要がある。

◆断崖絶壁
 縦スクロールのステージ。ジャンプを繰り返して岩棚を飛び移りながら、
 上に登っていく。岩棚の一部には、逆さつららもあり、落下すると大ダメージ。
 時折、砲弾が落下してくるので要注意。

[4]函館・五稜郭

 以上のステージを抜けると、場面変わって五稜郭内部。

解説「函館・五稜郭。本陣」

大鳥「おぉおぉ、ブリュネ中尉、無事で僥倖でござった。
   それにしても、許すまじは中立の約定を破ったイギリスめですな!
   義に篤いあなた方フランス士官の、
   爪の垢を煎じて飲ませてやりたいものでござる」

大鳥「おぉ、そうだ、榎本さんもブリュネ中尉には感謝の言を
   伝えたいとのこと。総裁の部屋に行かれるが良い」
五稜郭第一区画
老兵士「敗れたのは、南の木古内だけではない。
    西の二股口からも、我が軍が撤退してきたそうじゃ。
    いよいよ函館市街戦になるのかのぅ」

兵士I「一応、函館市街地は非戦地域ということで約定しているが…
    謀略の徒たる薩長が、それをどれだけ守るものか」

兵士II「いよいよ我が軍も、脱走組が増えているらしい。
    上の連中も見て見ぬふりをしているらしいが……」

兵士III「フランスの兵隊さんが、
    こんな異国の地であたら命を落とすこともあるめぇ。
    おいら、今夜にも北に逃げるんだが、あんたも一緒に来るかね?」

兵士IV「津軽海峡が新政府軍の手に陥ちた以上、
    函館を維持する兵力は我が軍にはないはずなのだ。
    この期に及んで、五稜郭に籠城して何をしようというのか」

兵士V「脱走するんなら、気を付けた方がいいぜ。
    脱走者は見逃されているという噂もあるが、
    どうにも函館から外に出た形跡がねぇ。
    内部の情報を漏らさぬよう、密かに殺してるってぇ、俺は睨んでいるぜ」

アイヌ兵士「アイヌの地、俺たちが守る。
      榎本、俺たちの土地を保証する、言った」

フランス兵士「ブリュネ中尉、ご無事でなによりです。
       松前の戦で中尉が敵陣に向かった時には、もう今生の別れかと。
       生きて、フランスに帰りましょう!」
ブリュネ中尉の私室
解説「ここがブリュネ中尉と呼ばれていた者の部屋らしい。
   机の上には、幼い女の子の写真が飾られている。
   『レーシャ』と書かれている。
   ブリュネ中尉の娘、だろうか?」

(発生条件)写真をもう一度調べると……

解説「机の上には、幼い女の子の写真が飾られている。
   と、写真の中の女の子がウィンクしたように思えた次の瞬間、
   女の子がしわがれた声を発した」

女の子「呵々…なに、驚くことはあるまい。儂じゃよ」

解説「エティスのようだ。
   わかっては見ても、幼女の口から老人の殷々とした声が
   漏れ出るのは気持ちの良いものではない」

エティス「五稜郭……ぬしを媒体として、なんとか入り込んでもみたが、
     得体の知れぬ気配が漂っておるの。
     瘴気――なれば、馴染みの気配じゃ。
     なれど、そうではない。
     否……瘴気は確かに在る。
     が、それだけではない古めかした薫りはなにか…
     そして、七惑星の神々が息吹をこれだけ感じぬのも解せぬ。
     この地に渦巻いているものはなにものなのか…」

(発生条件)更に調べると…

エティス「世界
     ……
     ………
     …………
     そもそも、世界とは、
     ぬしらの目に見えるものがすべてではないのだよ。
     七惑星の神々が住まう秩序の世界<天上界>、
     儂ら肉体を持つ人の仔が住む<物質界>、
     そして、
     原初となる混沌の渦巻く<暗黒界>。

     それらは互いにバランスを取りながら、
     共存してきた世界の要素でもあったのだ。

     ペンタウァは、
     そんな混沌と七惑星神の加護が交差する
     <物質界>の要の土地でもあった……

     ペンタウァは要である、それがゆえに未曾有に栄え、
     それゆえに滅びたのだよ…」

解説「それきりエティスは黙してしまった。瞑想に入ってしまったようだ」
総裁・榎本武揚の私室

 部屋の奥には、お洒落に口髭を生やした紳士が立っている。

榎本武揚「おぉ、ブリュネ中尉か、この度はご苦労だったね。
     まぁまぁ、掛けたまえ。
     紅茶でも一杯いかがかな。さて、あなたは珈琲派だったか」

榎本「なに、それどころではないと?
   失礼ながら、フランス人は優雅典雅のお国がら。
   我が国の者ほどには勤勉ではないと思っていたが……」

榎本「新政府軍が函館に迫っている、と?
   無論、わかっているとも。
   だが、それがなんだというのだね?
   函館市街地は、国際的にも認められた非戦地域。
   我らは、市民の壁によって守られているのだよ」

榎本「我らが共和国では、民草の一人までが平等にして、
   政体を構成する一員なのだ。
   それは、自ずと国を守る責任が民草の一人一人に
   課せられることを意味するのだよ」

榎本「もしも、新政府軍が非戦条約を破ったら、と?
   かような時は、それこそ国際法に則って、薩長の賊ばらを
   米仏の軍でもって成敗すれば良いのではないのかね?
   それに、五稜郭には……」

解説「その時、凍てつく風が室内を吹き抜け、榎本の言葉を打ち消した」

榎本「さあ、ブリュネ中尉、お茶が冷めてしまう。
   乾杯と行こうではないか、我が函館共和国に……!」

(End)